内臓痛と体性痛の違い
| 内臓痛 | 体性痛 | |
|---|---|---|
| 受容器のある場所 | 大半の内臓と、その周囲の結合組織 | 皮膚、筋膜、骨膜、関節包、腹の内側を覆う膜など |
| 痛みの感じ方 | はっきりしない鈍い痛み。吐き気を伴うことがある | 刺激に鋭く反応する痛み |
| 場所 | 局在が不明瞭。臓器の原基に対応する領域に広がりやすい | 限局していて分かりやすい |
| きっかけ | 臓器が引き伸ばされる、周りの筋肉が縮む | 膜(腹膜)などへの刺激 |
英語の総説では、腟・子宮頸部・子宮の痛みは内臓痛とされ、広がって場所が定まりにくく、しばしば別の部位に関連して感じられます。外陰など外性器は、皮膚に近い体性の構造とされます。
関連痛とは
関連痛は、原因の部位から離れた場所に感じる痛みです。MSDマニュアルの例は、胆嚢の病気が肩甲骨の痛みとして感じられる、腎臓の痛みが鼠径部(足のつけ根)に出る、というものです。専門版は原因を「脊髄での神経線維の収束」と説明しています。
後腸由来の臓器(遠位の大腸と泌尿生殖器)の痛みは、下腹部に出るとされます。膀胱・腸・生殖器は脊髄の回路を共有しているため、症状が重なりやすい、と総説は述べています。骨盤内の臓器の位置関係は骨盤の中の臓器の並び方で説明しています。
痛みを運ぶ神経の道すじ
腟からの感覚線維は骨盤神経を通って仙髄(S2〜S4)に入ります。子宮からの線維は下腹神経を通って胸腰髄に入ります。高さは資料でT10〜L1、T10〜L2と少し違います。子宮頸部は両方の神経が通る、移り変わりの場所です。外陰は陰部神経を通って仙髄に向かいます。
分娩痛の総説では、分娩初期の痛みはT10〜T12の皮膚の領域に関連し、下腹部、仙骨部、腰に感じられるとされています。
確かめられなかったこと
- 「子宮の痛みが太ももに響く」:今回確かめた資料には、記載がありませんでした。腰や仙骨部に感じることまでは確かめられています。
- 「皮膚の領域(デルマトーム)で、関連痛の場所が正確に決まる」:資料に説明がなく、一般向けの断定は避けました。
- 「骨盤内臓神経」という名前と、子宮頸部・腟がS2〜S4に対応するという対応は、分娩痛の総説では確認できませんでした(別の総説で骨盤神経とS2〜S4までは確認)。
すぐ受診する痛みの目安
MSDマニュアルは、次のときはすぐに受診するよう案内しています。
- 強い痛みがある
- 脈が速い、血圧が下がる、汗が出る、混乱するなどショックの兆候がある
- 体を丸めてしまう、触れたり動いたりで痛みが悪化する
- 腹部が膨れている
- ふらつき・失神、突然の激しい痛み(吐き気・嘔吐・大量の発汗を伴う)、発熱・悪寒、閉経後の性器出血がある(女性の骨盤痛)
痛みが軽く、警戒すべき症状がなければ、都合のよいときの予約でよいとされています。ただし痛みが続く、または強くなるときは、数日以内にかかりつけ医に相談してください。月経のときの痛みは月経痛のしくみで説明しています。
よくある質問
子宮の痛みはなぜ場所がはっきりしませんか?
子宮や腟などの痛みは内臓痛で、神経が脊髄で合流するため、場所がぼんやりして、離れた場所に感じる関連痛が出ることもあります。
痛みがあるとき、すぐ受診が必要なのはどんなときですか?
強い痛み、ショックの兆候、体を丸める、腹部の膨れ、ふらつき・失神、発熱・悪寒、閉経後の性器出血などです。
出典
- MSDマニュアル家庭版「急性腹痛」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「急性腹痛」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「疼痛の概要」
- MSDマニュアル家庭版「女性の骨盤痛」
- Jobling ほか, Front Pharmacol 2014「Female reproductive tract pain」 (英語)
- Labor & Maguire「The Pain of Labour」Reviews in Pain 2008 (英語)
この解説は、下に挙げた公的機関・学会・医学情報サイトの記述を読み、書かれている範囲で編集部がまとめたものです。診断や治療の代わりにはなりません。気になる症状があるときは、医療機関で相談してください。