痛みと神経|性行為のときの痛み

性行為のときの痛みは、痛む場所で原因が分かれる

性行為のときの痛みは、「どこが痛むか」で考えられる原因が変わります。外陰の浅い痛みと、下腹部の深い痛みに分けて考えるのが、医療者が最初にたどる道すじです。

浅い痛み
外陰・入り口付近。乾燥、皮膚の病気、感染など
深い痛み
下腹部の奥。骨盤底筋の緊張、内膜症、筋腫など
診断の基準
6か月以上続き、強い苦痛があること(基準を満たす前でも相談してよい)
相談先
婦人科。医師・理学療法士など複数で関わることもある

更新日:2026年10月31日|poruchio.jp編集部

痛む場所で分けた原因の例

場所考えられる原因の例(MSDマニュアル)
外陰(浅い)。軽く触れても痛い誘発性腟前庭痛、閉経に伴う変化、硬化性苔癬などの皮膚の病気、性器ヘルペス、腟炎、バルトリン腺膿瘍、手術後の腟の入口の狭まり
下腹部の深いところ(深い)骨盤底筋の緊張、子宮筋腫、慢性の骨盤内炎症性疾患、子宮内膜症

MSDマニュアル家庭版は、痛む場所を外陰、腟の中、下腹部の深いところの3か所に分けて説明しています。痛みの感じ方は、焼ける、刺す、締めつけられるなどさまざまです。深い痛みは内臓痛の性質を持つため、場所がはっきりしないことがあります(内臓痛と関連痛)。

原因が重なることが多い

原因は、身体の要因と心理の要因が重なることが多いとされます。身体では、閉経後の変化、性器の瘢痕、皮膚の病気、感染、骨盤底の緊張があります。授乳や閉経による乾燥、潤滑の不足、アレルギー、抗ヒスタミン薬なども、外陰の痛みの要因に挙がっています。心理では、過去のつらい体験や不安があります。

また、「痛みを予期して腟のまわりの筋肉が縮み、さらに痛む」という悪循環が起こりうる、と家庭版と専門版の両方に書かれています。筋肉の緊張については緊張で体がこわばるのはなぜで説明しています。乾燥の面は腟が潤うしくみと更年期以降の腟と外陰部の変化をご覧ください。

診察ではこの順にみる

  1. 外陰の視診
  2. 湿らせた綿棒で入り口付近に軽く触れ、痛みの場所を確かめる
  3. 骨盤底の筋肉(肛門挙筋)に触れて、緊張を見る
  4. 尿道・膀胱に触れる
  5. 腟鏡診と双合診で、子宮や卵巣を調べる
  6. 感染が疑われれば、検体の検査

痛みや不安で内診がむずかしいときは、医師が各段階を説明して緊張をやわらげることが勧められています。鏡で一緒に確認する、自分の手を医師の手に重ねる、といった工夫も紹介されています。NHSは、女性医師の希望や、付き添いの同伴も可能と書いています(英語)。

頻度と診断の基準

診断の基準(DSM-5-TR準拠)は、腟に何かを入れるときの著しい痛み、痛みへの著しい恐怖や不安、骨盤底筋の著しい緊張のうち1つ以上が持続または再発し、6か月以上続いて強い苦痛を伴うことです。ただし、MSDマニュアルは、苦痛や悩みがあるなら、基準を満たす前でも医師に相談するよう勧めています。年齢のせいと決めつけないことも勧めています。

頻度は、英国の人口調査(性的に活動している女性6,669人)で7.5%が痛みを報告し、そのうち約4分の1が「非常に頻繁、またはいつも」で、6か月以上、苦痛がありました。日本人女性の数字は、公的な出典では確かめられませんでした。

治療と相談先

  • 原因の治療:閉経に伴う萎縮には局所エストロゲンなど
  • 無香料の水性潤滑剤
  • 骨盤底の理学療法(筋トレ、バイオフィードバック、筋膜のほぐしなど)。専門版は、ほぼ全員に有用で推奨としています
  • 段階的な脱感作、局所の薬、認知行動療法。難治の場合はボツリヌス毒素、まれに手術

治療には、医師、理学療法士、精神療法士、セックスセラピストなど、複数の専門家が関わることがあります。痛みを我慢して続けず、痛みがあるときは婦人科やかかりつけ医に相談してください。

よくある質問

性行為のときの痛みは、我慢すれば慣れますか?

資料にそのような記載はありません。痛みを予期して筋肉が縮み、さらに痛むという悪循環が起こりうるとされています。続くときは受診してください。

どこに相談すればよいですか?

婦人科やかかりつけ医です。NHSは性の健康クリニックも挙げ、女性医師の希望や付き添いも可能としています。

出典

この解説は、下に挙げた公的機関・学会・医学情報サイトの記述を読み、書かれている範囲で編集部がまとめたものです。診断や治療の代わりにはなりません。気になる症状があるときは、医療機関で相談してください。